V.あなたの好みに

「ブラック小闘士!」


叫ばれたと同時に、悪寒が走り、咄嗟に身を翻す。

背後で風を切るような音。

体制を一瞬で立て直し、音の原因である魔物を仕留めた。


「お見事です!」

「危険を知らせてくれて感謝する」


そう言って違和感を覚えた。

手を後頭部に回すと、あるはずの三つ編みがなかった。

地面に視線をやれば、髪の束が落ちている。


「髪一重ってやつか」

「危なかったですね」


被害か髪だけで済んだと思うようにし、ヴァルはGCの任務を終えて帰宅した。


「ただいま」

「おかえり!……それ、どうしたんだい?」


ヴァルの髪を見て驚くガウラに、ヴァルは答える。


「攻撃を避けた時に切れてしまってな」

「怪我は?」

「髪だけだ、それ以外は無い」

「そうか」


怪我は無いと聞き、ホッとした表情を見せる。


「だが、さすがにこのままという訳にも行かないからな。美容師を呼んでもいいか?」

「あぁ、構わないさ。その間に夕飯用意しとくよ」

「いつもすまない」

「普段はヴァルがやってくれてるんだから、こういう時ぐらいはね」


ガウラが休憩を取り始めてから、食事の用意はガウラがする事が多くなった。

それが、ヴァルにとって楽しみの一つになっていた。

2階に上がり、軽くシャワーを浴びて美容師を呼び出す。

髪型をどうしようか悩んだ末、最近出たヘアカタログを出し、その通りにカットしてもらう。

カットが終わり、リビングへ戻ってくると、ガウラは目を見開いていた。


「随分思い切ったね」


ヴァルが選んだのはバズカットだった。


「今までは切りたくても切れなかったからな。試してみたかったんだ」

「切りたくても切れなかった?」

「裏稼業をしてるとな、髪が長い方が都合が良かったんだ」

「なるほどね」

「似合わないか?」

「いや、驚いたけど、よく似合ってるよ」

「そうか、なら良かった」

「でも…」

「でも?」


ガウラは少し考える素振りをして言った。


「三つ編みの方がヴァルらしくて私は好きかな」


そう言われて、ヴァルは驚いた表情を見せる。

それを見たガウラはハッとして、顔を赤くしながら慌て始めた。


「あ、いや!なんというか、見慣れないってのもあるって言うか!」

「ふふっ」


その慌てっぷりが可愛くて、思わず笑いがこぼれた。


「じゃあ、ガウラの為に髪を伸ばそうか」

「…いや、ヴァルの好きな髪型にすればいいじゃないか…」

「ガウラが好きだと言うなら、それに合わせたいんだ」

「…そ、そうかい。まぁ、好きにしな」

「あぁ、好きにする」


笑顔で返すと、ガウラは顔を赤くしたまま「ご飯にしよう!」と恥ずかしさを誤魔化すように言ったのだった。

とある冒険者の手記

FF14、二次創作小説 BL、NL、GL要素有 無断転載禁止

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