A.帰路に着く

オールドシャーレアンのバルデシオン分館前で、アリスは義姉であるガウラの帰還を、ソワソワしながら待っていた。

終焉を唄う者との戦いから戻ったあと、ヴァルはガウラの家で待つと言って早々に居なくなり、ヘリオと2人で待っていたのだが、なんだか胸騒ぎがして落ち着かなかったのだ。


「少し落ち着け」


背後から声がかかり振り向くと、そこにはパートナーのヘリオの姿。

その顔は呆れている。


「ソワソワしたところでどうにもならんだろ」

「それはそうなんだけどさ、なんか胸騒ぎがして…」


アリスの様子に溜め息を吐く。

その瞬間、ヘリオの表情が歪んだ。


「ヘリオ?!どうしたんだ!?」


少しよろけたヘリオを支える。


「…大丈夫だ、少し目眩がしただけだ……」

「本当に大丈夫か?ま、まさか義姉さんの身に何か起こってるとか?!」

「大丈夫だ、目眩以外何も無い。姉さんも大丈夫だろう…たぶんな」

「………」


ヘリオを段差に座らせ、自分もその隣に座る。

元は1人だった2人、片方に異変があれば、もう片方にも影響があるのではと思った言葉だった。

少しづつヘリオの顔色が落ち着き、ホッと胸を撫で下ろす。

しばらく無言のまま、空を眺める2人。

その空に一瞬光るものを見つけた。

それを見つけた瞬間、アリスは勢いよく立ち上がり、ヘリオに振り向いた。


「帰ってきた!ヘリオ!行こう!」


そう叫んで、アリスは一目散に走り出す。

知神の港には既に多くの人達が集まっていた。

人混みをかき分け、港に向かうと、ラグナロクから降りてきた暁のメンバーとガウラにタタルが「おかえりなさいでっす!」と言っていた。

ガウラの無事な姿を見て、感極まって視界がボヤける中、アリスは駆け寄った。


「義姉さんっ!!」


彼女を呼び、勢いのまま抱きしめた。


「わっ?!なっ、なんだい?!」

「良かったっ……良かった無事で……っ」

「お前…泣いてるのかい?」


抱きしめたまま泣いているアリスに、ガウラは苦笑いをして背中をポンポンと叩いた。


「ただいま、心配かけたね」


その言葉に体を離したアリスは、涙を袖で拭い笑顔で言った。


「義姉さん、おかえりなさい!」


アリスの笑顔に満足したガウラは、彼の周りを見て首を傾げた。


「お前、ヘリオと一緒じゃないのかい?」

「え?」


言われてアリスも辺りを見回す。

人混みにもヘリオの姿がないと分かると、途端にアリスの顔が青ざめていく。


「一緒に来てると思ったのに……ま、まさか消え……」

「バカ言え。私が無事なんだから大丈夫だろ。ちょっと探してくるから、お前は待ってな」


そう言ってアリスの肩を叩き、ガウラはその場から離れたのだった。





***********





暫くすると、ガウラからチャットが入った。

"ヘリオを見つけた、少し借りる"

その内容にホッとしたアリスは、バルデシオン分館のナップルームで待ってると言う返信をして、そこに向かった。

荷物を纏めていると、ガウラとヘリオが部屋に戻ってきた。

すると、おもむろにガウラが口を開いた。


「アリス」

「はい」

「前にお前に取ってきてもらったクリスタル。それがある場所を教えて欲しい」

「分かりました、今簡単な地図書きますね」


手帳を取りだし、1ページを切り取る。


「義姉さん達の故郷からこっちに行くとビッグベアのナワバリがあるので~」


ガウラに説明しながら地図を書いていく。


「だいたいこの辺りですね。見つけるのにそんな時間はかからないと思います。あ、故郷の入口の位置はこっちです」

「ありがとう」


地図を受け取り、礼を言う。


「そういやヴァルは?」

「ヴァルさんは、義姉さんの家で待ってるって言ってました」

「そうか」


その後、ナップルームで一休みし、3人は暁のメンバーと共に帰路に着いたのだった。





とある冒険者の手記

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