V.新たな宝物

ヴァルのトームストーンにアリスからチャットが届いた。

内容は、"今モードゥナを出ました。義姉さんは用事を済ませてから家に帰るそうです"との事だった。

アーテリスの危機を救ったばかりだと言うのに、用事を入れるそのアクティブさに溜め息を吐く。

彼女の体力は、一体どうなっているのかと疑問に思うぐらいだ。

時刻はまだ朝の9時。

昼に帰ってくるのかは怪しかったが、夜に帰ってきても夕飯のおかずに昼食の残りを出せばいいと割り切り、昼食の準備を始めた。



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午後2時頃、玄関の扉が開いた。

そちらに向かうと、「ただいま!」と帰ってきたガウラの姿があった。


「おかえり、無事で何よりだ」


ヴァルがそう答えると、ガウラは少し気まずそうに口を開いた。


「ヴァル…その…ごめん!」

「?」


突然謝られ首を傾げる。

すると、言いずらそうにガウラは話し始めた。


「無事は無事なんだけど…その……」

「どうした?」

「……これ……」


申し訳なさそうに差し出したのはペンダント。

だが、それに着いてい無属性のクリスタルは跡形も無くなっていた。


「………」

「ごめん、ヴァルの宝物を…壊してしまって…」


俯くガウラに、ヴァルは溜め息を吐いた。


「ガウラ。お前、死にかけたな?」

「…ごめん」

「はぁ…これが壊れたという事は、クリスタルに込めたレイズが発動したということだ。なにがあった?」


すると、ガウラは正直に話し始めた。

終焉を唄う者と戦った後、ゼノスと死闘を繰り広げた事。

デュナミスの力で限界をこえる程の戦いで命を燃やし、決着が着いた時に力尽きたということだった。


「……」

「…ヴァル?」


何も答えないヴァルを上目遣いで見る。

すると、ヴァルはガウラを抱きしめた。


「にゃっ?!」

「…本当に無事で良かった」

「……ヴァル」


どうしたらいいか分からず、じっとしているガウラ。


「お前が生きて帰ってくれただけで十分だ」


そう言って身体を離したヴァルの顔は、優しく微笑んでいた。


「それでだね、このペンダントの代わりになるかは分からないけど、同じ物を作ってきたんだ」


ガウラは荷物から真新しいペンダントを取り出した。


「用事って、この事だったのか」

「なんで知ってるんだい?」

「アリスに、帰る時連絡を寄越せと伝えておいたんだ」


なるほどと納得するガウラ。

ヴァルは新しいペンダントを受け取る。


「あのペンダントの代わりは他にない」

「……だよな…ごめn」

「でも、このペンダントはあたいの新しい宝物だ」

「えっ?」


顔を上げると、満面の笑みを浮かべたヴァルがいた。


「あれは"ヘラ"から貰ったものだが、これは"ガウラ"から貰った物だ。だから、これは唯一の宝物だ」


ヴァルの言葉に驚いた表情で固まっているガウラ。

それを気にせず、ヴァルは新しいペンダントを首から下げた。

彼女の胸元でキラリと光る無属性のクリスタル。

ヴァルは満足気な表情で、そのクリスタルを指で撫でた。


「まぁ、気に入ってくれたなら良かったよ」

「気に入らないわけがないだろう」

「前のペンダントはどうするんだい?」

「あれはあれで大事な思い出だ。大事に保管しておくさ」


そう言って、ヴァルは微笑んだのだった。



とある冒険者の手記

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