A.きっかけ

その日、アリスは義姉ガウラの家に来ていた。

特に約束をしていた訳では無いのだが、何となく足が向いたのだ。

玄関のドアをノックすると、返事と共にガウラが姿を現した。


「アリス?」

「義姉さん、こんにちは!突然来てすみません」

「なにかあったのかい?」

「いえ、近くに寄ったので顔を見に来たんです」

「そうかい。ま、立ち話もなんだから入りな」

「お邪魔します」


促されて家に上がる。

ダイニングに案内されて、ヴァルの姿が無い事に気がついた。


「あれ?今日はヴァルさん居ないんですね」

「あぁ、あいつは里で修行してるよ」

「修行?」

「近頃、GC任務で色々あってね。ヴァルは思う所があるのか、毎日里に行って鍛え直してるんだと」

「なるほど」


アリスは少し考える仕草をして、口を開いた。


「義姉さんは、調子はどうなんですか?」

「ん?可もなく不可もなくって感じだよ」

「そっかぁ……」

「なんだ?何か言いたそうだが?」


なんだが言いにくそうにモニョモニョしているアリスに、ガウラはハッキリしろと言うと、彼は意を決した様に言った。


「義姉さん!ルレ、一緒に行きませんか!!」

「……ルレ?」


予想外の言葉にオウム返しするガウラ。


「実は今、各ジョブのレベリングしてて、オールカンストまであと少しなんですよ。今、黒魔道士上げてるんですけど、それが終われば賢者と占星術師だけなんです」

「へぇ、頑張ってるじゃないか」

「へへっ!ありがとうございます!それで、義姉さんのリハビリになればいいなと思って誘ってみたんですけど………」

「…………」

「そんな面倒くさそうな顔しないでくださいよぉ~!!」


露骨なガウラ表情に、アリスは駄々を捏ね始めた。


「ほら!義姉さん、第十三世界や十二神の事も解決しなきゃいけないでしょう?」

「なんでお前が知ってるんだ……」

「ヤ·シュトラさんやグ·ラハさんから連絡来ましたもん」

「アイツらか…」

「それに、義姉さんの事だから、その2つが解決しても、また新たな目的が向こうから舞い込んで来る気がするんです」

「それは…否定できないかもなぁ…」

「そしたら、装備も整えなきゃでしょ?ほら!ルレをやる理由があるじゃないですか!」

「えー……」

「ね!だから義姉さぁ~ん、一緒に行きましょうよぉ~!」


アリスに「ねぇ~、義姉さぁ~ん!」とまとわりつかれ、ガウラは折れた。


「だぁー!もうっ!分かったよ!行くよ!」

「やった!」

「で?いつから行くんだい?」

「明日からどうですか?」

「分かった、明日からな」

「はいっ!ミストの俺の家で待ってますね!」


アリスは嬉しそうにそう言うと、"長居するのもあれなんで"と帰って行った。

その夜、夕食後のまったりタイムに、ガウラはヴァルにルレの話をした。


「ルレか…」

「アリスの提案だけど、私もそろそろ色んなことをいい加減解決しないとと思ってたしな」

「いいんじゃないか?ガウラの負担にならないならそれでいい」

「正直な気持ち、面倒くさいけどな」


彼女の素直な気持ちに、小さく笑うヴァル。


「まぁ、無理ない範囲でな。無理してると思ったら、あたいは止めるぞ?」

「ははっ、分かってるよ」


ガウラは、ヴァルの心配性に困ったように笑いながら返事をしたのだった。



***********



翌朝、約束通りガウラはミストへと来た。


「義姉さん!おはようございます!」


彼女をみつけ、笑顔で手を振りながら挨拶をするアリス。

その後ろには、見知らぬ冒険者が2人いた。


「おはよう。後ろの2人はフレンドかい?」

「はい!」


アリスは2人を軽く紹介した。

挨拶を交わす3人。

その時、家の扉が開いた。


「おいアリス。忘れ物だぞ」


出てきたのは、ガウラの弟であり、アリスのパートナーのヘリオだった。


「え?忘れ物?」

「ほら、弁当」

「わ!気づかなかった!ありがとう!」


弁当を受け取り、カバンにしまう。


「姉さん、おはよう」

「おはようヘリオ。髪、伸びたな」

「あぁ、鬱陶しくてかなわん。今度切るつもりだ」

「そうかい。てか、ルレならお前が付き合ってやれば良かったんじゃないか?」

「今、少し別のことで手が離せなくてな」


面倒臭いと言わんばかりに溜め息を吐くヘリオ。

こっちはこっちで、色々あるらしかった。


「姉さんも、面倒かもしれんがアリスを頼む」

「わかったよ」


そして、ルレを開始した。

久しぶりに身体を動かすとあって不安はあったが、身体が覚えているのか、危なげなくルレをこなして行った。

その日のルレが終わる頃には、ガウラの顔には疲労はあったものの、清々しいというか、彼女らしい表情を浮かべていた。



**********



それから数日、毎日ルレをこなし、アリスの黒魔道士がカンストした日の夕方。

アリスとガウラはミストの家の前で、フレンドの2人を見送った。


「義姉さん、今日もお付き合いありがとうございました!」

「こちらこそ。黒魔カンストおめでとう」


笑顔で言葉を交わす2人。

アリスはニコニコしながらガウラを見つめる。


「なんだい?」

「やっぱり、義姉さんは冒険してた方が生き生きしてますね!」


突然そんな事を言われ、キョトンとする彼女。

それに構わず、アリスは続けた。


「無理はして欲しくないですけど、義姉さんには旅をしてて欲しいです。だから、旅を再開しませんか?」

「アリス……」

「俺、義姉さんが楽しそうに旅をしてるのを見るのが好きです!それに、どんな冒険だったのか聞くのも!」


子供の様に話すアリス。

それだけで、どれだけガウラを慕っているのかが伝わった。


「だからっ」

「ありがとう」

「え?」

「今回のルレのお陰で、自分の気持ちが再確認出来たよ」


ガウラは目を閉じ、胸に手を当てる。

そして、笑みを浮かべた。


「また旅をするよ!」

「義姉さん!」

「まったく、本当にお前はお節介と言うか、世話焼きと言うか…」

「それ、義姉さんが言います?」

「あははっ!人のことは言えないか!」


そう言って2人で笑い合う。


「ま、お前が残りのジョブを終わらせるまではルレに付き合うよ。合間合間で、抱えてる問題を片付けるさ!」

「無理はしないでくださいね?義姉さんは程々に休みを取らないから心配になります」

「お前は私に旅をして欲しいのか、休んで欲しいのかどっちなんだい?」

「どっちも程々に!ですよ!」


もー!っと言うように頬を膨らませるアリスを見て笑うガウラ。

このことがきっかけで、ガウラは少しづつ、旅を再開して行ったのだった。

とある冒険者の手記

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