V.出来ない相談
ウルダハのマーケット。
多くの人が行き交うこの場所で、ガウラとヴァルは露店の商品を吟味していた。
今日はヴァルがスイレンの所に情報を買いに来た後に、少し買い物をしようと言うことになったのだ。
露店に並ぶ商品を、あーでもないこーでもないと選んでいると、ガウラの耳に男達の話し声が聞こえた。
「なぁ、あそこの色黒のミコッテはどうだ?」
「あー、いいねぇ。胸がデカくてエロそうだ」
その言葉に、周りを確認する。
すると、こちらを見ながらニヤニヤと会話をする男2人組がいた。
「見ろよ、あの身体のライン。スタイル良いし、顔も良い!」
「わかる!キツそうな顔してるけど、そういう女ほど萌えるよな!」
(あぁ……またか……)
ガウラは大きく溜め息を吐いた。
ヴァルと人通りの多い場所に来ると、必ずこう言った男共の話し声が耳に入る。
パートナーが褒められているのは構わないが、明らかに狙われているのは気分が悪い。
「なぁ、声かけてみるか?」
その言葉が聞こえた瞬間、男2人組の方に身体を向けた。
それに気づいた様子の男2人組に向かって、ガウラは“手を出すな”と言うオーラを放った。
その顔は男2人がビビる程の迫力があり、そそくさと去っていく。
それを見て、ガウラは“フンッ!”と鼻息荒くヴァルの方に向き直ると、ヴァルが不思議そうな顔で見つめていた。
「どうした?」
「……いや、なんでもない」
ヴァルは首を傾げながら商品に視線を戻し、目当てのものを購入していく。
そんな彼女の姿を、改めて確認する。
(そういえば、よく体のラインが分かる服を着てるな)
今も、ヴァルの着ているものは体のラインがよく分かる物である。
それが彼女の魅力を際立たせているのだが、これが原因で異性から性的な視線を浴びてると思うと、なんだか複雑な気持ちになる。
買い物が終わり、帰路を歩いている時、ガウラは口を開いた。
「なぁ、ヴァル」
「ん?なんだ」
「あのさ、あまり身体のラインが分かる服装しないでくれないか?」
「…それは出来ない相談だな。特にガウラと一緒にいる時はな」
「どういうことだい」
何故、自分がいる時限定で無理なのか分からず聞き返すと、ヴァルは答えた。
「あたいに注目させとけば、ガウラが被害に遭う事がないだろ?」
「おまっ?!気付いてたのかっ!?てか、わざと?!」
「それ以外、何か理由があるとでも?」
しれっと言われて唖然とするガウラ。
「そうか、さっきガウラが憤慨してたのは、そう言う会話が聞こえたからか」
「………」
「ふふっ、ガウラはあたいの立派なボディーガードだな」
そう言って、ヴァルは嬉しそうに笑ったのだった。
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