A.想いに返事をする

ヘリオは、姉であるガウラに呼び出され、彼女の家に来ていた。

リビングに通されると、お茶と菓子を出され、向かい合って席に座ると、彼は言った。


「それで、話ってなんだ?」

「アリスから相談があってな」

「……」


姉の言葉に、溜め息を吐く。

一体、あいつは何を相談したんだという顔をする弟に、ガウラが続けた。


「あいつの言葉をそのまま再現するとだな

“最近ヘリオの様子が変なんです。いつもなら、好きだと言えば溜め息を吐きながら呆れられるんですけど、最近は何か悩んでる様なそんな反応するんです。どうしたのか尋ねても、なんでもないって返されるし…、俺、ヘリオに嫌われちゃったんじゃないかと思ってぇ~”

だとよ」

「あいつ……」


プライベートを相談で暴露された恥ずかしさに、眉間に皺を寄せる。


「で、お前はパートナーを不安にさせてまで、何を悩んでいるんだい」

「……」

「アリスを嫌いになった訳じゃないんだろ?」


ガウラの問いかけに、ヘリオは頷く。


「私にも言えない悩みなのか?」

「………」


ヘリオは大きく溜め息を吐くと、観念したように話し始めた。

自分の実力不足でアリスが死にかけたことによって、今までの認識が変わった。

今までは、アリスが寿命を迎えるまで、いつも通りの日々が続くと心のどこかで思っていた。

だが、人生の途中で死ぬこともある可能性を痛感してしまったこと。

以前、アリスが言った“今を大事に、悔いが無いように”という言葉は、耳にタコができるぐらいに、毎日想いを伝えるアリスの行動そのものなのではないかと思ったこと。


「まぁ、それらの事に気付いたら、その……、俺もちゃんと返した方がいいんじゃないかと思ったんだが……」

「だが?」

「……いざ、言葉にしようとすると、恥ずかしくて……な」

「………お前なぁ……」


ガウラは呆れた表情で言った。


「私より先にエタバンしてて、今更恥ずかしいって、付き合いたてのカップルじゃあるまいし…」

「……姉さんはどうなんだ」

「私はちゃんと返してるよ。最初の頃は照れくさかったけどね。でも、返せば幸せそうに笑ってくれるし、それを見たら恥ずかしさなんか吹っ飛んだよ」

「………」


そう言われて、ヘリオは考え込む。

それを見て、ヤレヤレといった感じで、ガウラは言った。


「言葉にするのが難しいなら行動で示してやればいいじゃないか」

「行動?」

「私やアリスに対する行動と、他人に対する行動は違うだろ?アリスだってそれに気付いているから、今までお前が呆れた反応してても気にしなかったんだろうさ」

「………」

「なら、他人にはしない行動をとって、想いを示してやれ」

「他人にはしない……行動……」


そう呟いて、再び考え込む弟を見て、ガウラは彼の人としての成長に、小さく笑みをこぼした。



***************



ガウラ宅から帰宅したヘリオは、夕食を終えると、ベッドに腰掛け、今日言われたことを考えていた。

アリスは食器を洗っているが、その表情は不安そうであった。

それを見たヘリオは、彼がそこまで不安に駆られて居たのかと罪悪感を感じた。

しばらくすると、洗い物を終えたアリスが先程とは違う笑顔で隣に座った。

その笑顔は、少し無理をしてる様に見えた。


「おつかれ」

「ありがとう!そういえば、今日は義姉さんに呼ばれたんだろ?」

「あぁ。あんたが相談しに来たって話でな」

「あ……」


それを聞くと、アリスは気まずそうにする。


「その…、不安にさせて悪かったな」

「え…」

「別にあんたの事が嫌いになったとかじゃないから安心しろ」


ヘリオの言葉に一瞬驚いたが、その一言はアリスを安心させるのには十分だった。


「そっか!良かったぁ!」


満面の笑みを浮かべ、ヘリオを抱きしめるアリス。


「ヘリオ、大好き!」

「………」


想いを伝えられ、ヘリオは少し躊躇したが、ゆっくりと手を動かし、アリスの頭をポンポンとした。

今までにない反応に驚き、少し身体を離したアリスの視界に入ったのは、赤面しながらそっぼ向くヘリオだった。

そんな彼を見て、アリスは一瞬で理解した。

これが、自分の気持ちに対するヘリオからの返事なのだと。


「ヘリオ」

「……なんだ」

「嬉しいよ」

「……そうか」


再びヘリオを抱きしめるアリス。


「えへへ~♡」

「………」


心底嬉しそうなアリスの声に、ヘリオは赤面したまま、もう一度彼の頭をポンポンとしたのだった。

とある冒険者の手記

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