Another 白蝶草━痴話喧嘩━
ガウラはモードゥナへとやってきていた。
ヘリオが賢学を学びにオールドシャーレアンへ旅立ち数日経った頃、暁から新メンバーが加入したから顔合わせをすると連絡があったのだ。
普段なら、顔合わせに行くことは無いのだが、今回の新人は即戦力になる為、オールドシャーレアンへも共に行くことになると聞き、それなら先に顔を合わせておいた方が良いと判断したのだ。
石の家に入ると、いつものメンバーが勢ぞろいしていた。
「おや、私が最後かい?」
「あぁ、これで全員揃ったな」
ガウラの質問にサンクレッドが答える。
「その新人とやらは、皆初顔合わせかい?」
「いや、俺とアリゼーは先に顔を合わせてる。アリゼーの悪い癖が出てな」
「当たり前じゃない!加入希望で、オールドシャーレアンにも同行したい!だなんて言われたら、実力を確認しないとでしょ!サンクレッドだってノリノリで手合わせしてたじゃない!」
その光景が目に浮かぶようで、ガウラは思わず苦笑した。
そんな感じで和気あいあいと話していると、タタルが奥の部屋から出てきた。
「皆さん、集まりまっしたね!では、新メンバーを紹介するでっす!」
タタルが「どうぞでっす!」と声を掛けると、奥の部屋から出てきた新人。
その人物を見てガウラは驚いて固まった。
「皆さん、初めまして!今回加入させていただきました、フ·アリス·ティアです!宜しくお願いします!」
笑顔で挨拶した新人は、ガウラの恋人、アリスだった。
ガウラは思わず声を上げる。
「アリス?!なんでお前がここにっ」
「え?!ガウラ知り合いなの?」
その反応に、アリゼーが尋ねる。
唖然としているガウラの代わりに、アリスが答えた。
「あ、話してませんでしたっけ?俺、ガウラの恋人です」
「ええええええええええっ!!!!????」
驚き絶叫するアリゼー。
他のメンバーも驚きで目を丸くしている。
「なっ!お前っ!」
「本当のことだろ?」
アリゼーの絶叫で我に返ったガウラがアリスに声を上げると、しれっと答えるアリス。
「いや、そもそも!なんでお前なんだ!暁に加入するなんて聞いてないぞ!」
「そりゃ、言ってなかったし?」
「なんで黙ってた?!」
「言ったらガウラ、反対するだろ?」
「当たり前だろ!遊びじゃないんだぞ!!」
そのガウラの言葉に、流石のアリスもカチンと来たようで、怒声を上げた。
「そんなの分かってるよ!俺だって遊びで加入したんじゃない!」
「じゃあなんでっ!!」
「惚れた女が危険な事に首突っ込んでるのを、黙って見てられるわけないだろっ!!」
「な…っ!!」
アリスの言葉に、ガウラの顔は驚きながらも赤くなる。
それを見たサンクレッドは「ヒュ~」と口笛を吹き、ヤ·シュトラは「ふふっ」と笑う。
「なんの為に、俺が今まで実力を磨いて来たと思う?忍者からナイトにジョブを変えたと思う?全部ガウラを護る為に決まってるだろ!!」
「っ!!」
アリスの言葉に何も言えなくなったガウラに、サンクレッドが口を開いた。
「これは、ガウラの負けだな」
「そのようね」
同意するヤ·シュトラ。
他のメンバーは未だに唖然としていた。
そんな状態には目もくれず、ギャーギャーと怒鳴り合いの喧嘩をしている2人を、ヤ·シュトラが仲裁し、改めて自己紹介をした。
その後、ガウラとアリスの関係をアリゼーが質問攻めし始めた。
「恋人って言ったけど、どっちから告白したのよ!」
「俺ですね」
「それで、ガウラはなんて返事したの?!」
「告白した時は、返事もらってないです」
「ふーん、時間置いて返事貰った感じなのね?」
「ですね」
平然と答えていくアリスに、ガウラは恥ずかしさで彼を睨みつける。
「2人きりの時のガウラってどんな感じなの?」
その質問が出ると、アリスの顔がだらしなくニヤケ始めた。
「それはですねぇ~」
意気揚々と答えようとした瞬間、ガウラの鉄拳がアリスの頭に落ちた。
「いってぇーっ!!」
「プライベートをベラベラ話すんじゃないっ!!馬鹿野郎!!」
再び2人の喧嘩が始まる。
それを別のテーブルから見ていたサンクレッドとヤ·シュトラとウリエンジェが苦笑しながら言った。
「また喧嘩してるわね」
「喧嘩するほど仲が良いと言う言葉がございますよ」
「どっちかと言うと、夫婦喧嘩は犬も食わないの方が合ってないか?」
「まだ夫婦じゃないっ!!」
その言葉に、聞き捨てならないと振り返って怒鳴るガウラ。
その瞬間、3人が爆笑したのは言うまでもなかった。
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